経営承継にあたって課題となるのは次の3つと言われています。
1.相続にあたって民法上の遺留分が問題になる
2.代表者変更に伴う信用不安で金融機関との関係が問題になる
3.自社株の評価が高額となり、多額の相続税負担が増大する。
このような課題を支援するため政府は「中小企業における経営の承継の円滑化に法律」、通称「中小企業経営承継円滑化法」を平成20年5月に成立させました。
内容は、上記の3つの課題にあわせて次の3点。
1.民法の遺留分に関する「民法特例」
2.経営の円滑な承継のための資金融資制度「金融特例」
3.相続税や贈与税の「納税猶予」
対象となる企業は、「中小企業基本法で定義する中小企業」となり、一定の条件があります。
○民法特例とは?
遺言がある場合でも相続人が最低限認められている権利が遺留分となります。
この遺留分の計算は贈与時点ではなく、相続発生時の評価額で計算されることになります。
この遺留分があることで、例えば生前に自社株式を贈与していたとしても遺留分があることで相続発生時に請求されるとその遺留分の侵害分を渡さないといけなくなります。
しかも、その評価額が贈与時点よりも経営努力によって大幅に上昇していたケースでは、その後継者の努力によって上昇させた部分についても遺留分計算に含められ、請求される可能性があるのです。
この遺留分計算に関する特例として設けられた制度には次の2つがあります。
・贈与した自社株式を遺留分算定基礎財産から除外できる特例
・贈与株式の評価額をあらかじめ固定できる特例
これらの特例の適用にあたっては、特例中小企業者の旧経営者が推定相続人の一人に自社株式を贈与することが前提となりますが、推定相続人の当事者全員の同意が必要であることなどの適用の条件があり、一定の手続きが必要となります。
実際に贈与をする前に、特例の条件があるかどうか、手続きのスケジュールなどの検討は必須といえます。