資格ライフ.COM 

プライベートバンカー・ウエルスマネジメント・ファミリーオフィス・エステートプランニング・資産税の専門家を目指すブログ-TaxAccounting&Financial Planning

非嫡出子がいる場合の相続税の計算が変わります

非嫡出子の相続分について民法900条4項ただし書き前段に関する最高裁違憲判決がでました。

民法900条には法定相続分について書かれています。

第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一.子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二.配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三.配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四.子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。

ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

今回問題になったのは、この「ただし、~~」の前段部分です。

「ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」の部分となります。

日本では、法律婚主義が徹底されていましたが、諸外国や最近の風潮などを考慮したうえで子供の人権を尊重するような形に判例が変更された形です。

さて、法律上は違憲という判断が最高裁によって下されたわけですが、民法はまだ改正されてはいません。

いくら違憲といっても、法律を書きかえるためには国会で法案の形で成立する必要があります。

民法は改正されてはいませんが、税務上はこの最高裁の判断、趣旨を優先して、平成25年9月5日以後、申告(期限内申告、期限後申告及び修正申告をいいます。)又は処分により相続税額を確定する場合(平成13年7月以後に開始された相続に限ります。)においては、「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1」とする民法第900条第4号ただし書前段(以下「嫡出に関する規定」といいます。)がないものとして民法第900条第4号の規定を適用した相続分に基づいて相続税額を計算することとなりました。

相続税の確定や遺産分割のタイミングなどによって多少の留意点はあるようですが、基本的には今後は、嫡出子と非嫡出子がいる場合であっても区別ない法定相続分として計算しますということです。

国税庁からはホームページ上でお知らせの形で取り扱いが示されています。

国税庁ホームページのお知らせ

 http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h25/saikosai_20130904/index.htm

さて、このようにただし書き前段をなかったものとして計算すると相続税はどのようになるのでしょう。

相続税の計算は、亡くなった方の相続財産を法定相続分で仮に按分して税率を乗じ、そのそれぞれの相続税額の合計額を実際の相続割合で按分して各自の相続税を計算することになります。

法定相続分が税額計算に影響がでるのは、相続税の税率が超過累進税率によるためです。

例えば基礎控除後で9千万円の財産について嫡出子と非嫡出子の2人が相続すると、今までなら嫡出子が6000万円、非嫡出子が3000万円の法定相続分となります。

これに対する相続税は速算表にあてはめると、嫡出子分が1,100万円、非嫡出子分が400万円で合計1,500万円となります。

これが嫡出子と非嫡出子が同額の4,500万円の法定相続分だとどうなるか?

これも速算表にあてはめると、一人当たり700万円で合計では1,400万円です。

つまり、100万円の差額が生じます。

この計算はつねに有利になるわけではなく、ケースバイケースのようです。

国税庁としては税収が減るわけではないから別にどうでもいいということなのか、民法の改正がされていないのにずいぶんと気に早い話です。

ただ、国会としても違憲状態のものを放置するのは問題となるため、なるべく早く改正が諮られることでしょう。

いずれにしても、法律判断や判例は変わることもあるということで、それに対してきちんと税務についてもアップデートしていく必要があるということだと思います。

【SPONSOR LINK】