終の棲家は住み慣れた我が家で…というのは昔の話でしょうか。
最近はサービス付高齢者住宅という選択肢も増えて、最期は施設でという方も多いと思います。
最近受けた相続税のお仕事もお子さんのいないご夫妻でそれぞれ別の施設に入居されていました。
老人ホームというと税理士として心配になるのが、入居一時金はどうしたかという話と小規模宅地の特例適用です。
まずは入居時に保証金を払ったのか、誰がどういう立場で払ったのかということが気になるところです。
幸いにして今回は夫婦のいずれも入居一時金はないケースでしたが、これがあると入居一時金の精算処理の確認が必要になります。
そして誰がどういう立場で負担したのかも大きな問題となります。
ご主人が入居するにあたって自分で払うというのは大丈夫でしょう。問題なさげです。
退去時の精算金も自分の財産ですし、相続のときも相続した人が相続税を払えばいいと思います。
一方で専業主婦の奥さんの入居費用をご主人がはらうケースもありますよね。奥さんが入居しますから奥さん名義で契約書をつくり、奥さんの名前で入居一時金を支払います。
これって問題ありますか?という話。
過去の裁判や国税不服審判所の裁決例などを読んでもなんとなく腑に落ちてきません。
自分の判断ではご主人が立て替えて払ったのではないかというイメージです。
入居一時金は毎月の家賃や利用料に充当されて少しずつ減っていきますから、減った分は生活費の負担だし、ご主人が亡くなったときは奥さんが残りの債権を相続した形で相続税を払えばいいように思います。みなし相続財産みたいな扱いでいいように思っています。契約者が解約返戻金分を相続したものとみなして課税すればいいのに…という感じです。
ただ過去の裁決などをみるとそうではなく、契約段階で贈与と考えるのが原則となりそうです。
あくまでも奥さん名義の契約についてご主人が払ったのだからその時点で贈与!という裁決例があるようです。
もちろん扶養義務がある家族の生活資金の援助ですから一般的な範囲内では贈与税はかかりません。子どもを大学に行かせたり、結婚式の費用を面倒みるのと同じです。社会通念に従って、通常の生活費の範囲での実費負担であれば贈与税はかからないのです。3年以内の贈与加算もなくてすみます。贈与税のかからない贈与扱いなら、これが一番よさそうです。
ただし、最近は豪華な老人ホームというのもあります。
億ションのような富裕層向けのホームの入居一時金、何千万円から1億を超えるものもあるようです。
これはさすがに税務署も黙っていないようです。
通常の生活費の負担を超えているから、普通に贈与税の対象にされ、3年以内なら生前贈与加算で相続税に持ち戻すように言われることもあるようです。
また、契約も単独で入居するケースだけでなく、夫婦で入居してご主人が先に亡くなると自動的に契約が奥さんに移るようなものもあるようです。
いずれにしでもケースバイケースで、毎回きちんと検討したほうがよさそうです。
さらに小規模宅地の特例も老人ホームに入居した場合は特殊な判断が必要になります。
家族のあり方もかわり、終の棲家もかわり、死に方も変わってきています。
取り扱いがなかなか自分の腑に落ちないのは、国税も世の中の動きや社会情勢、世論の読みながら微妙に取り扱いや表現を変えてきているからかもしれませんね。