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投資や資産形成を目指す人のための所得税の基本的な計算の骨組み

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税金計算の基本的な仕組み

FPの勉強会で講師をする、「投資や資産形成のための税金講座」の原稿を作っていますが、まずは基本的な骨組みを理解してもらうところからスタートかな、という感じで考えています。

税金計算は段階的に計算を行うことが多いですが、所得税は概ね6つ段階で計算を行うことになります。

1.    各種所得の計算
2.    損益通算
3.    所得控除
4.    税額計算
5.    税額控除
6.    源泉所得税と予定納税の精算

これらを個別に解説していきます。

1.各種所得の計算

1月1日から12月31日までの期間で所得とされるものを集計し、これを10種類の所得に分類する作業です。10種類の所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得、退職所得、山林所得、一時所得、雑所得となります。

このうちでも特に優遇される所得分類があります。それが退職所得と一時所得、総合課税される長期の譲渡所得です。損益通算後に2分の1課税されます。毎年あるものではなく数年に一度や一生に一度のものですから、偶発性などを考慮して優遇されることになります。投資にあたっても、この優遇をうまく使えば節税することも可能です。

 2.損益通算

10種類に分類して計算した各種所得のうち、プラスのものとマイナスのものを相殺する手続きになります。

10種類の所得内のものは基本的に所得内部で通算できますが、分類が異なる所得間の通算である損益通算は不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得のマイナスのみ認められます。

ただし、不動産所得の負債の利子、株式や不動産の譲渡損失、生活費に通常必要でない資産の売却損など損益通算できないものもあります。基本的には節税対策を封じ込めるものとなります。また、損益通算には順序があります。

損益通算とは別に損失の繰り越し控除というものもあります。青色事業者の事業の損失や株式の譲渡損失などは一定の手続きをすることで翌年以降に繰り越しして相殺が可能です。

3.所得控除

上記で計算した所得金額から所得控除を差し引いて実際に課税される所得額を計算します。所得控除は14種類があり、納税者や課税の属性や状況など人の問題に着目した人的控除と、保険料の支払いなどのそれ以外の状況に着目した物的控除の2種類があります。

物的控除には、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄付基金控除の7種類です。人的控除は、障害者控除、寡婦控除(ひとり親控除)、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除の7種類です。

投資や資産形成をする上で重要になるのは物的控除のほうになると思います。老後のための資産形成には少し手厚い控除があります。

国民年金基金は社会保険料控除、iDeCoや小規模企業共済は小規模企業共済掛金控除となり、生命保険料を支払えば生命保険料控除となります。ふるさと納税については寄付金控除となります。節税をしながら資産形成を考える場合には物的控除を有効に使うことが大事です。

4.税額計算

所得から所得控除を差し引いたものが課税所得となり、これに税率をかけて税額計算を行います。ここでの税額計算には2種類あります。総合課税と分離課税です。投資をする上では総合課税と分離課税の違いを理解しないといけません。

分離課税は、その名の通り分離して課税されるもので代表的なものは不動産の譲渡益です。譲渡所得税ということもありますが、所得税のうち分離して計算されるもので確定申告書に一緒に記載していきます。長期の不動産の譲渡所得や株式の譲渡所得などは15%の税率で一律に計算されます。給与などの他の所得が高い人も影響されずに分離課税される所得ごとに別々に税額計算をしていきます。

総合課税は、分離課税以外の所得、事業所得や不動産所得などを合算して総所得金額を計算し、これに超過累進税率を適用して税額計算を行います。

超過累進ですから税率が高くなるにつれて階段上に適用される税率があがる性質があります。税率は5%から45%となっています。

これに復興特別所得税の2.1%住民税10%が加わります。復興特別所得税2.1%は税率ではなく上乗せ率ですから税率が高い人ほど実質的な負担は高くなります。5%の税率なら5.105%で0.1%の負担増ですが、45%の税率なら実質的に45.945%となり1%弱の負担増となります。単純に2.1%ではなく所得税の税率ごとにどのくらいの負担増になるのかも考える必要があるでしょう。

住民税は一律比例税率で10%ですので足すと最低税率は約15.1%で、最高では約56%となるでしょうか。

税率が高い人の節税では所得控除をうまく使うことが効果が高いですが、もう一つ、「分散」がキーワードになります。税率が高いところの所得を家族や数年に分散して節税をするという対策が可能です。

5.税額控除

計算して求めた税額から税額控除を差し引きます。所得控除と異なり税額から直接控除する形です。有名どころでは住宅借入金等特別控除があります。他は配当控除や寄付金控除でしょうか。

寄付金控除は所得控除でもありますが、公益法人などに寄付した場合は税額控除との選択適用となります。税額控除は寄付額の20%などと決められていることが多く、税率が低い人は税額控除が有利になり、税率が高い人は所得控除が有利になります。

配当控除については配当所得を総合課税されているケースのみ控除が可能です。こちらも税額によって総合課税+配当控除にするか、分離課税とするか、申告不要とするかの選択となります。

税額控除をしたのちの税額に復興特別所得税として税額の2.1%が加算されます。

6.源泉所得税と予定納税の精算

最後に天引きされていた源泉所得税、先払いしていた予定納税額を控除して最終的な納税額である第3期納付税額を計算します。

税額が大きい人は予定納税が2回ありますから確定申告時に支払うものは第3期の納付税額となります。記載もれなどが多いようですので忘れずに記載して計算しましょう。

税金をなるべく払いたくないならまずやるべきことは

本当に基本的な部分だけですが、所得税の計算の骨組みを理解することが節税につながると思います。

口では節税とか、税金をなるべく払いたくない、、と言っている人ほど税金の仕組みを理解していないことが多いように感じます。税理士の仕事でも、税金が増えてつっかかってくる人ほどきちんと理解していないし、自分でしっかりと学ぶつもりもないという人がほとんどです。

節税をしたいのであれば、まずは税金の計算についてざっくりとでも自分が理解するようにすることが大事です。

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