「税理士」という仕事をしていると、どうしても法律の条文や、積み上げられた書類の山と格闘する時間が長くなります。
特に相続の話となると、ご家族の歴史や想いが詰まっている分、一つひとつの作業に非常に神経を使います。
そんな私が最近、一冊のちょっと変わった本を手に取りました。 といっても本屋でみつけたわけではなく、東京税理士協同組合のピックアップ書籍として取り上げられていたので買ってみた、というところです。
「ベテランの税理士が、今さらAI(人工知能)?」 そんな声も聞こえてきそうですが、読んでみるとこれが意外と、私たちの「相談の現場」を明るくしてくれるヒントが詰まっていました。
AIは「魔法」ではなく、気の利く「助手」
最近ニュースでもよく聞く「ChatGPT」などの生成AI。
正直に言うと、私も最初は「なんだか難しそうだし、冷たい感じがするな」と思っていました。でも、この本を読んで考えが変わりました。
AIは、私の代わりにアドバイスをしてくれる「魔法使い」ではありません。 むしろ、「ものすごく仕事が早くて、ちょっと物知りな新人助手」のような存在なんです。
本書には、大野先生が考えた「税理士がAIをどう使うか」という23個のアイデアが紹介されています。例えば、こんな感じです。
難しい法律用語を「わかりやすい言葉」に直してもらう
膨大な資料の要点を、短時間で整理してもらう
お客様への説明資料の「下書き」をパッと作ってもらう
これらは、今まで私が机にかじりついて、何時間もかけてやっていた作業です。
そこをAIに手伝ってもらう。そうすることで何が変わるのか?
それが、一番お伝えしたいポイントです。
作業の時間を減らして、対話の時間を増やしたい
私がAIを取り入れようとしている一番の理由は、作業を楽にしたいから……だけではありません。
「あなたのお話をじっくり伺う時間を、もっと作りたいから」。これに尽きます。
相続の相談で一番大切なのは、実は計算よりも「気持ち」の部分だったりします。
「長年連れ添った妻に、不自由させたくない」 「この家には思い出が詰まっているから、壊さずに残したい」 こうしたお話に耳を傾け、最良の解決策を一緒に考える。
これこそが、私の本当の仕事です。
AIに事務的な「下書き」を任せられれば、その分、私はペンを置いて、相談者と向き合うことができます。
デジタルな道具を使うのは、実はとてもアナログで温かい「対話」を守るためなんですね。
ベテランの「経験」とAIの「速さ」、いいとこ取り。
もちろん、AIが書いたものをそのまま鵜呑みにすることはありません。
そこはベテランの出番です。
AIが作った下書きを読み、「いや、このケースではこの判例を忘れてはいけない」「この書き方ではお客様が不安になる」と厳しくチェックし、修正する。
「AIのスピード」と「長年の経験からくる直感」。
この二つが組み合わさることで、今まで以上に正確で、かつスピーディな対応ができるようになる。
そんなワクワクする未来が、大野先生の本には描かれていました。
おわりに:これからも、進化し続ける相談相手でありたい
『税理士のための生成AI活用アイデア23選』。
この本を読み終えて、私は「新しいことを始めるのに遅すぎることはないな」と改めて感じました。
技術はどんどん進化しますが、私の「お客様の財産と想いを守りたい」という気持ちは変わりません。むしろ、新しい道具を使いこなすことで、その気持ちをもっと形にしていける気がしています。
「AIを使っている」と言っても、画面ばかり見ているわけではありません。
むしろ、以前よりももっと、相談者の顔を見てお話しできる準備が整った。
そんなふうに思っていただければ嬉しいです。
