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税理士実務家が税理士事務所職員やFP(ファイナンシャルプランナー)に向けて資産形成と相続に関する税金や税制改正について実務家目線でわかりやすく解説します。

【令和8年度税制改正】「1億円の壁」に大ナタ!富裕層のミニマムタックス税制の強化とFPの実務ポイント

今回は、令和8年度税制改正のなかでも、富裕層やオーナー経営者、投資家のお客様をお持ちのFPの皆様にとって非常に重要な「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化(ミニマムタックス課税)」について解説します。

一般家庭向けには「178万円の壁」への引き上げといった減税(手取り増)が話題になっていますが、一方で富裕層に対してはかなり厳しい増税策が打ち出されています。

お客様の資金計画や手取り額に数千万円、数億円単位の影響が出る可能性がありますので、しっかりと仕組みを整理しておきましょう!

「1億円の壁」とは?(超過累進税率と比例税率の仕組み)

この改正の背景には、いわゆる「1億円の壁」という税制上の課題があります。これを理解するためには、所得税の2つの計算方法の違いを知っておく必要があります。

  • 総合課税(超過累進税率):給与所得や事業所得などが対象です。所得が高くなるにつれて税率も階段状に上がり、最大で55%(所得税45%+住民税10%)という非常に重い税金が課されます。
  • 分離課税(比例税率): 株式や不動産の譲渡益、配当金などが対象です。こちらは所得の金額に関わらず、一律約20%(所得税15%+住民税5%など)の税率となります。

本来、日本の税制は「稼いでいる人ほど税率が高くなる」はずなのですが、実際の統計を見ると、所得が1億円を超えたあたりから実質的な税負担率が下がっていく(逓減する)という現象が起きています。

これは、所得が数億円を超えるような超富裕層は、給与(総合課税)ではなく、株の売却益や配当金といった「税率が一律20%の分離課税」で所得を受け取る割合が圧倒的に多くなるためです。

この不公平感を是正するために導入されたのが、ミニマムタックス税制です。

ミニマムタックス課税の仕組みと令和8年度改正の内容

ミニマムタックス課税とは、給与も株の利益も不動産の売却益もすべて合算した「基準所得金額」をもとに、全体を一定の税率で計算し直し、最低限支払うべき税額を求める制度です。

この特別な計算式で算出した税額が、通常の方法で計算した所得税額を上回る場合に、その差額を追加で納めることになります。

この制度自体は令和5年度税制改正により令和7年から適用が始まっていますが、今回の改正で「令和9年(2027年)分以後の所得」から、その基準が大幅に厳格化(大増税)されることになりました。

改正のポイント

  •  差し引ける特別控除額が半減: これまで「3.3億円」だった控除額が、「1.65億円」へと一気に引き下げられます。
  • 適用される税率がアップ:税率が「22.5%」から、「30%」へと引き上げられます。

計算式にすると、「(合計所得金額 - 1.65億円) × 30%」となります。

控除額が下がり税率が上がったことで、実質的には年間2億〜3億円程度の所得がある方から、この追加課税の対象になってくる見込みです。

税理士、FPの実務ポイント:どんなお客様が対象になる?

この改正により、対象者はこれまでの年間200〜300人程度から、1,700〜2,000人規模へと一気に拡大すると予想されています。

FPとして、以下のようなお客様には特に注意喚起が必要です。

① M&AやIPO(新規上場)で自社株を売却する経営者

これまで株式の売却益は一律約20%の税金で済んでいましたが、このミニマムタックスの対象となれば、実質的な税負担が大きく跳ね上がります。

M&A後の手取り資金を元にしたライフプランニングや資産運用の見直しが必須となります。

② 都心のタワーマンションなど高額不動産を売却した方

不動産の譲渡益も分離課税ですが、このミニマムタックスの計算(合計所得金額)には当然含まれます。

億単位の売却益が出た年には、想定以上の税金がかかる可能性があります。

③ 暗号資産(仮想通貨)で大きく利益を確定させた方

暗号資産についても、今後分離課税(20%)への移行が予定されていますが、分離課税になったとしても、このミニマムタックスの対象には含まれるため、多額の利益確定(利確)を行う年には注意が必要です。

【要注意】申告不要制度を選択した所得も合算される!

ここが最大の落とし穴です。確定申告で「申告不要」を選択した上場株式の配当金や特定口座(源泉徴収あり)での譲渡益であっても、ミニマムタックスの計算上はすべて合算して判定されます。

「確定申告に載せていないから大丈夫」とはならない点に十分ご注意ください。

まとめ:税理士、FPとしてのメッセージ

今回の令和8年度税制改正は、一般家庭への手厚い配慮(減税)の裏で、富裕層に対しては「1億円の壁」の是正や不動産評価の見直しなど、非常に厳しい包囲網が敷かれています。

税率の一律な分離課税を前提としたこれまでの資産形成・出口戦略は、見直しを迫られる時期に来ています。

数年後に大きな資産の売却や事業承継を控えているお客様がいらっしゃいましたら、ぜひ「税引き後の本当の手取り額」がどう変わるのか、早めのシミュレーションと情報提供を行ってあげてください!


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