
7月に入り、税理士試験の本番までいよいよ残り1ヶ月になりましたね。
全国の受験生の皆さん、毎日の猛勉強、本当にお疲れ様です。
私は現在、税理士法人で実務家として働きながら、ファイナンシャルプランナー(FP)としても活動しています。
私は20代で5科目(+1科目)の合格を果たしましたが、税理士試験を突破したのは、25年以上も前のことです。
四半世紀が経ち、税法も、実務のデジタル化も大きく変わりました。
ですが、「試験1ヶ月前のあの独特な緊張感と、押しつぶされそうな焦り」だけは、今でも昨日のことのように思い出せます。
実は25年前、私も皆さんと同じように、必死で直前期を戦っていました。
当時はスカイビルにあったTAC横浜校に通っており、この時期は朝から夜まで、とにかく自習室にこもりきりの毎日でした。
冷房の効いた自習室の中で、周りの受験生が電卓を叩く「カタカタカタ……」という音だけが響くあの独特な空間。
「あいつは自分より進んでいるんじゃないか」という焦り。
外に出た瞬間の夏のむっとする暑さと、夕暮れの横浜の景色を見ながら感じた、なんとも言えない孤独感。
今でも、あの夏の空気感を鮮明に思い出すことができます。
時々、税理士試験の夢をみて、目覚めたあとで、もう受験勉強しなくていいと思ってほっとしたこともありました。
だからこそ、今皆さんがどれほど苦しく、孤独な戦いをしているかが痛いほど分かります。
そんなプレッシャーと戦っている皆さんへ。今日は一足先に試験を乗り越え、長年この業界で生きてきた先輩として、今一番伝えたいことを贈ります。
実務でも全く同じ。最後に身を助けるのは「徹底した基礎力」
残り1ヶ月になると、焦りから「もっと難しい論点をやらなければ」「応用問題が解けないと落ちるのでは」と、新しい教材や難問に目を向けがちです。
ですが、25年以上実務をやってきて、今強く確信していることがあります。
それは、現場で本当に強いのは「誰も知らないマニアックな税法に詳しい人」ではなく、「誰もが知っているはずの基本を、絶対に間違えない人」だということです。
試験も全く同じです。合否を分けるのは難問ではなく、誰もが正解できるAランク・Bランクの問題を確実に得点できたかどうか。
予備校の答案練習会ではあえてマニアックな論点や難しい内容を直前になってでてきて、受験生を戸惑わせることがあります。
予備校が難しい問題をなぜやらせるかというと、難しい問題の中からでも解ける問題、拾える点数をしっかり拾うという訓練も必要だからです。
でも新しい武器を探しに行く必要はありません。
これまで使ってきたテキストと答練を信じて、基礎をピカピカに研ぎ澄ます。これだけに集中してください。
「忘れる恐怖」に負けないで。直前の詰め込みは本番で生きる
理論暗記をしていて、「昨日覚えたことを今日忘れている」という絶望感を味わっていませんか?
安心してください。受験生全員が同じ恐怖と戦っています。
実務に出てからも、新しい税制改正や複雑な案件に直面するたび、私たちは常に勉強し、頭に叩き込んでいます。
人間の脳は、ギリギリまで泥臭く詰め込んだことほど、本番の張り詰めた空気の中で不思議とスッと引き出されるものです。
「忘れたらまた覚え直せばいい」の精神で、直前まで1行でも多く目を通し続けましょう。
一言一句間違えなく覚えていないと合格しないという試験ではないので、ギリギリまで広く浅くでもまんべんなく抑えましょう。
「この会場で、自分が一番頑張った」という自信を持って
私の本番の試験会場は、早稲田大学でした。
試験当日、キャンパスに溢れ返る大量の受験生を見たとき、一瞬その圧倒的な熱気に気後れしそうになりました。
しかし、一呼吸置いて周りを見渡したとき、心の中から湧き上がってきた感情がありました。
「いや、この会場にいる誰よりも、自分はTAC横浜校の自習室で朝から夜まで泥臭くやってきた。自分が一番準備をしてきたんだ」という、絶対的な自信です。
不思議なもので、死に物狂いで机に向かった日々は、本番で「最高の盾と矛」になって自分を守ってくれます。
皆さんがこれまで費やしてきた時間、叩いてきた電卓の数、ボロボロになったテキストは裏切りません。試験会場に入ったら、どうか胸を張って「自分が一番やってきた」と自分に言い聞かせてください。
税理士の仕事は、人生をかけて取り組む価値がある
今、皆さんは目の前の電卓を叩き、理論を暗記することだけで頭がいっぱいかもしれません。「こんな苦しい勉強、本当に意味があるのか」と思う日もあるでしょう。
ですが、現役の税理士として断言します。税理士は、人生をかけて取り組むに値する、最高に面白くてエキサイティングな仕事です。
中小企業の社長の経営を支え、個人の資産を守り、時にはFPとしての知見も掛け合わせながら、お客様の人生の節目に深く寄り添うことができる。
あの時、必死に机に向かった数年間があったからこそ、今の私の充実したプロフェッショナルとしての人生があります。皆さんが今流している汗は、間違いなく未来の大きな資産になります。
最後に:現役のプロとして、会場へ向かう君たちへ
これからの1ヶ月は、実力と同じくらい「体調管理」が合否を左右します。
睡眠時間を削って勉強したくなる気持ちは痛いほど分かりますが、本番で100%のパフォーマンスを出せなければ意味がありません。
しっかり食べて、しっかり寝る。
そして、「絶対に今年、こちらの世界(実務の現場)に行くんだ」という強い気持ちを持って、残りの日々を淡々と過ごしてください。
8月、皆さんがこれまでの努力をすべて出し切れるよう、心から応援しています。
いつか実務の現場で、プロフェッショナル同士としてお会いできる日を楽しみにしています。
ラストスパート、駆け抜けてください!




