来月、FP向けの勉強会の講師をやるのですが、税理士ではないFP向けの勉強会なのでそもそも税務に関して相談を受けた場合にはどうすればいいの?ということも少し話をしようと思っています。
税務相談は無償であっても税理士の独占業務
税務相談は「業として・・」という制約のない無償独占業務とされています。
微妙な線引きは別として、個別具体的な相談はダメで、一般論としての制度の説明や解説ならOKとされます。ただ、実際に相談を受けると一般論で解決できるような話ではないように思うのですが、一応はこの線引きがよくいわれるところです。
- 個別具体的な相談・・・×
- 一般論としての制度の説明や解説・・・〇
そうはいってもFPとして税務は専門外なので相談に全くのらないわけにはいかないと思います。FPとしての相談対応のゴールはコンプライアンスに反しない範囲で税理士と連携したり、税務署に誘導することが大事なのかなと思います。
FPはライフプランに関する入口の相談相手として窓口となって他の専門家にふるためにも税務の引き出しをもつことが必要だと思います。
その場で答えをだす必要はないと思うので、まずは税務問題が絡む相談かどうかを見極めることからなのかなと思っています。
税務相談にはリスクが伴います
税務相談のリスクですが、先日の日経新聞の記事でもあったのですが、税理士に対する損害賠償事例が増えているといわれています。
原因としては税制が複雑になってきているだけでなく、税理士自身の勉強不足やスタッフのマネジメントの問題もありますが、依頼者がインターネットで調べて税理士のミスに気づいたり、弁護士も仕事になるから他の専門家の責任を追及するようになってきているようです。
最近の税理士業界で言われることは、過度に節税しすぎると税務署からにらまれるし、あまりに慎重になりすぎると依頼者から責任を追及されるということで、両面を意識する必要があります。専門家責任は重くなっているように感じます。
FPとして相談を受けた場合であっても、相談相手は税務も詳しいと思っている可能性がありますので、適用要件を確認せずに特例が受けられると断定したり、前提条件がわからない段階で個別具体的な相談を受けるとあとで問題になることもあります。
相談者によっては専門家の言質をとりたり、お墨付きが欲しいということで相談にくる人もいます。職場でもいる○○さんがいいっていいました、、、的な人がいますよね。こういった人は警戒したほうがいいと思います。
今は税務署の税務相談でもガードが厳しくなっています。昔は税理士でも電話で相談をして、教えてくれたりしたのですが、今は税理士からの事前相談はほとんどできない状況になっています。とりあえず提出があったら検討します。。という感じです。
税務相談にその場で即答する必要はない
相談を受けるとその場で即答しないといけないと考えると方もいるかもしれません。決してその場で回答する必要はないし、逆に持ち帰ってきちんと調べてから回答したほうが感謝されるケースも多いと思います。引き出しさえもっていれば後でインターネットとか書籍で調べることもできるし、専門家に確認することもできます。
僕も20代で税理士になりたての頃に区役所の相談員に登録して相談に行ってみたのですが、相談内容はかなり高度かつ深刻なもので、まったく役に立てずにかなり落ち込んで帰ったのを覚えています。その頃はまだインターネットで何でも調べられるということはなかったので、税理士としての知識や経験がそれなりに大事だったのですが、今は知識や経験よりもどの引き出しを開けて、どう調べるか、、という情報の取り方や情報のまとめ方のほうが実務的には重要になってきていると思います。
税務相談は一次欲求ではなく、二次欲求に基づいている
我々が相談を受けていても税金から相談がスタートすることはまずないです。「税金を一つください・・・」というものではないし、病院や薬局とかと同じように薬が欲しいのではなく、病気を治したいという1次欲求を満たすための相談だと思います。
税金の相談だ、、と言われてもその背景にあるものはなにか?逆に本当はほかに考えていることがあってそれに関連する税務の相談なのかを考えるようにしています。
「税金はかかりますか?」と相談を受けたら、家族の状況や取引の全体像を確認して、なぜその取引を行いたいのか、民法や他の法律ではどのように判断されるのかをトータルで考えてから税務について考える形です。ただし、たまにせっかちな人もいるので、そういう人は先にある程度可能性を伝えてから、ヒアリングをするようにはしています。
FP的な発想でいうと、ライフステージごとのライフイベントというのがあります。そのライフイベントにおいてどんな取引があって、そこにどんな税務リスクや必要な手続きがあるのかどうかの相談になると思います。
実務では前提条件や必要や数字は与えられない
また、実務では試験問題や継続テストなどと違って前提条件や数字が与えられません。自分でヒアリングをしてどんな取引になるのか確認して法律上の取り扱いとかも含めて税務の判断をし、契約書などの必要な資料を収集して、これらの原始資料から必要な情報を収集するという形になります。
パソコンを使えば申告書自体は知識がなくてもある程度はできてしまいますが、税理士の仕事の大部分は申告書をつくるというよりも、必要な資料と情報の収集であり、これらの資料や情報とどう向き合って判断するか、、ということになっています。
税務判断という言葉がありますが、税務判断はどのような事実があったのかという事実認定に税法をあてはめることになるので、想像力が実は大切で、どんな取引だったのかその事実を想像して事実認定をするわけですから、家を売ったり買ったり過去に実際に経験したことがあれば一番です。
そういった経験がなければ過去の事例で見聞きしたことから自分なりに脳内に映像をつくったり、、という経験値も大事です。変な風に聞こえるかもしれませんが、これが実務経験の差ということになります。
机の上で行う仕事だけではなく、日常生活のすべてが実務経験に繋がるというつもりでいるといいのかもしれませんね。