昨年、税理士会で募集している慶應義塾大学大学院の補佐人講座に参加してきましたが、なぜ税理士が税法理論をきちんと学んでいかなければならないのか…ということもあわせて考えてみました。
税理士試験は簿記、財務諸表論の他に税法科目に3科目合格しなければいけません。
税法科目といっても理論問題と計算問題で半々のボリュームとなっており、税法については基本的には暗記がメインです(現在は実務的な問題も増えているようです)。
暗記が得意な人はいいけど苦手な人にとってはまさに苦行です。
毎日、税法のテキストを読み込んで頭に入れるだけの日々です。
でも、実務では理論的なことはそれほど使う場がないのが現実です。
税法そのものよりもコンピューターソフトへの入力がメインになります。
お客様と直接面談するような仕事ではもちろん税法の知識が役に立ちますが、事務所内での作業はほぼ入力作業となります。
法人税や消費税は基本的にはコンピューターソフトに入力していけば申告書までできあがる仕掛けになっています。
国税庁の質疑応答事例や税務判断が必要となるのは、我々のような町の税理士事務所では所得税や資産税まわりの仕事になります。
これは修繕費か資本的支出かどうか、耐用年数は何年、譲渡所得の計算はどうすればいいのか…?
税金計算では法人税よりも所得税のほうが複雑で迷うべきことも多いものです。
もちろん、都市部の大きな企業を相手にしている税理士法人では移転価格税制や国際税務、組織再編税制なども重要なのでしょう。
相続税の土地評価については財産評価基本通達があったとしても細かい部分までは掴めない部分です。
大蔵財務協会などででている問答集などを参考にせざるを得ません。
さらに提案業務についてはぜったいに白黒はっきりわかるものはなかなかありません。
参考書にでているような提案をしても税務署から指摘を受ける可能性もあります。
そんなときに役に立つのが税法の考え方だと思います。
そして訴訟における立ち位置や事例となり、過去の裁判例をもとに将来の予防策や理論構築、形式的な準備をしていきます。
そういった作業のために税法を学ぶ必要があると思います。
会計事務所で何年経験したとしても、税理士で開業して何年がんばったとしてもこういったベクトルをもって仕事をしなければたぶん税務の専門家としては難しいと思います。
ベクトルのもっていきかたでいろいろな税理士がいます。
経営に強い税理士、資産税に強い税理士、相続に強い税理士、会計に強い税理士…
ただ税務をしっかりやる、土台をきちんと作るにはやはり税法や判例をきちんと学ぶ必要があるということに講座では気づかされました。
税理士登録をして10年以上だっていますが、この時期に参加してよかったと思います。