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資産所有方式型の管理会社を作るなら設立の目的と設立後の方針を明確にしましょう

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不動産オーナーや地主さんの相続税の対策として資産管理会社の提案をすることがあります。特に最近では資産所有方式の管理会社が増えています。

今回は、この資産所有型の管理会社を設立する趣旨と効果について解説をしたいと思います。

建物のみを法人所有とするのが一般的

資産所有型法人といっても、土地建物の両方を法人に移転するわけではありません。基本的には建物のみを法人所有とし、土地は個人所有のままとします。

土地まで移転しようとすると、初期費用だけで高額なコストがかかってしまいますし、費用対効果の観点ではマイナスになる可能性もあります。

そのため、まずは建物のみを法人所有とするのが一般的です。

この結果、法人に家賃がすべて入ってきますから「家賃収入-地代支出」が会社の収支となり、土地所有者である個人の収支は「地代-土地の固定資産税等」となります。

建物移転による節税効果

建物のみを移転した場合の節税効果は2つあります。

効果1 所得税対策の効果

個人地主の所得が大きい場合は、法人所得と個人所得の税率差分の所得税等の節税となります。

所得の大部分が法人に移管されて個人の収入は地代のみとなりますし、実際には「地代-固定資産税」が所得となりますので、個人の所得の大部分が圧縮されます。

所得税と個人住民税の最高税率は合計で55%+復興税ですので、中小企業の特例が使える法人税等の税率差を使った節税が可能となります。

効果2 相続税対策の効果

個人地主の財産が大きい場合は、家賃を法人で内部留保したり、家族社員に役員報酬等で支払うことで将来の相続税対策になります。

建物が個人所有のままの場合には家賃等の入金は個人名義で蓄積することになりますが、法人に移転することで資金の蓄積は法人名義となります。

法人の株主を後継者などにしておくことで、間接保有ではありますが後継者名義での財産の蓄積となります。

水道の蛇口を個人の器から、法人の器に変えることになるのです。

例えば毎年1000万円の家賃を個人名義で10年貯め続ければ1億円の相続財産となります。相続税の税率が30%であれば3,000万円払うべきだったところですが、法人名義で貯めていればこの3,000万円の相続税はかからない、ということになります。

どういった方針で運営するのか?

趣旨と効果がわかったとすると、次に考えるべきなのがどういった方針で資産管理法人を運営するのかということになります。

方針としては次の2つの考え方が一般的です。

方針1 利益を内部留保せずに役員報酬などで親族に所得を分散する

報酬にみあった業務をしていただくことが前提となりますが、所得税等の税率の低い後継者を役員とし、法人に利益を内部留保せずに、後継者に給与で支給する方針です。

社会保険の事務負担などが別途発生しますが、所得分散効果と後継者個人名義でのキャッシュの蓄積が可能です。

法人の器で資金をプールするのではなく、後継者名義で資金をプールすることになります。

後継者が既に高所得者であり、税率が高い場合には効果が減少しますので、注意が必要です。

方針2 利益を法人に内部留保し、将来的に何らかの形でキャッシュアウトする

後継者の所得税等の税率が高い場合などは、法人に利益を内部留保して将来に備える方針もあります。

法人名義のキャッシュとなるため自由に使えないというデメリットがありますが、将来的には建物の修繕や建て替えを実施したり、相続発生時に敷地や別の収益不動産を追加購入することでキャッシュアウトも可能となります。

役員報酬で支払う場合には最高税率が55%となりますが、敷地や別の収益不動産を法人が買い取る場合には分離課税で20%の税率となります。また、相続から3年10か月以内の買い取りであれば取得費加算という特例も活用できます。

役員報酬で税率の低い親族に支払っていても後継者以外に資金がわたってしまったのでは効果の意味をなさないこともあります。相続発生までは法人で資金をプールして、相続発生後に必要に応じて資産の買い取りや自己株式の取得でキャッシュアウトするという方法も検討が必要でしょう。

節税のために誰でもいいから親族に資金を分散させる、、という方法もケースバイケースでしょう。

管理法人を設立するなら方針を明確に

先代の頃のつくった管理会社があっても実際は何のためにあるのかわからないような状態になっているものも多いようです。

決して管理法人は作っただけで効果があるわけでもないし、維持費だけがかかり続けたり、節税面からも逆効果になっていることも少なくありません。

設立の趣旨や目的と、設立後の方針を明確にし、長期的なプランに基づいて運営をすることが大事です。

時々は目的と方針を再確認したり、プランニングを見直しましょう。

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