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投資と資産形成の税金-赤字(損失)と黒字(所得)の相殺ルール

今回は、10種類に分類して計算した各種所得のうち、プラスのものとマイナスのものを相殺する手続きになります。プラスとマイナスの相殺のルールです。

赤字の黒字を相殺する3つの方法

まず、同一の所得内で相殺をしていきます。これを内部通算とか所得内通算といいます。
その次に、異なると区分間で相殺していきます。これを損益通算といいます。
内部通算や損益通算で引ききれなかったのでも翌年以降に繰越ができるものがあります。これを損失の繰越控除といいます。

繰越控除できるものの代表例がこの4つです。

  • 総合課税所得の損失の繰越である、純損失の繰越控除
  • 居住用財産の譲渡損の繰越控除
  • 上場株式等の譲渡損失の繰越控除 
  • 先物取引の差金等決済(FX等)の繰越控除 

これに所得控除の繰越である雑損失の繰越控除が加わります。

内部通算、損益通算、繰越控除の3種類の相殺方法について少し詳しく解説していきます。節税のために、利益と損失の相殺ルールはうまく活用していきたいところです。

内部通算のルール

同一の所得内での相殺、内部通算のルールからとなります。

同一所得区分であれば、基本的には内部通算はできます。

複数の事業をやっている場合でも同じ事業所得なので内部通算は可能です。一時所得や雑所得はなんでもボックスで、まったく異質なものが入ってきますが、それでも内部通算は可能です。

例えば、

  • 個人でFPとコンサルタントやカウンセラーなどの2種類以上の事業をやっている場合、同じ事業所得ですので相殺が可能です。
  • 生命保険の満期や解約金は一時所得になるのですが、満期でもらう金額よりも払込掛金の累計が多い赤字の保険契約と黒字の保険契約がある場合は、同一年であれば赤字と黒字の相殺はできます。
  • 雑所得であれば、副業で行った業務の損失と講演料やアフィリエイトの収入、貸株の収入も雑所得となりますので、こういったものは通算可能です。

一方で注意が必要なのが譲渡所得の内部通算です。

(譲渡所得の計算のうち内部通算できるもの)

  • 賃貸用不動産の譲渡益と居住用不動産の譲渡損も同じ年の売買であれば相殺が可能です。用途は関係ないので、同じ不動産の譲渡益と譲渡損の通算ができます。土地と家屋の間での相殺も可能です。
  • 譲渡所得は保有期間や所有期間で、短期と長期で区分が分かれますが、短期譲渡と長期譲渡の間の内部通算もできます。

(譲渡所得の計算のうち内部通算できないもの)

  • 総合課税の譲渡益と分離課税の譲渡損の内部通算はできません。同じ譲渡所得でも相殺は不可となります。例えば、総合課税となる金地金の譲渡益と、分離課税となるワンルームマンションの譲渡損といった感じの相殺はできないということになります。
  • 分離の譲渡所得どうしでも、不動産の譲渡益と株式等の譲渡損の内部通算はできないルールになっています。

損益通算のルール

次に異なると区分間での相殺、損益通算のルールです。

損益通算ができる所得区分は決まっている

損益通算できる損失は、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つの所得区分で生じたもののみ他の所得との相殺が可能です。一時所得や雑所得の赤字は損益通算の対象外です。税理士などの受験的にはフジサンジョーのゴロで覚えます。

例外的に損益通算ができない損失とは?

できないものに注意が必要です。

土地に関する負債の利子は損益通算できない

不動産所得の赤字でも土地にかかる借入金の利息は損益通算ができません。バブルのときに規制をいれたままになっていますが、借金で土地を買って賃貸した場合に、利息部分で赤字になっても節税できないルールです。

不動産や株式の譲渡損は他の所得と損益通算できない

不動産や株式の譲渡損の赤字は、給与所得など他の所得との通算はできません。居住用の譲渡損の特例を使う場合のみ例外的に通算が可能になります。

上場株式の譲渡損と配当金の相殺ルールに注意

また、総合課税の配当金と分離課税の上場株式の譲渡損も損益通算できません。上場株式の譲渡損と相殺したい場合は、上場株式の配当金は全て分離課税を選択する必要があります。

生活に通常必要でない資産と生活に必要な資産がある

生活に通所必要でない資産の譲渡損や個人に対する低額譲渡も損益通算できません。

生活に通常必要でない資産というのはどういうものか、というと、高額な貴金属や骨とう品などです。ゴルフ会員権も生活に通常必要でない資産とされました。昔はゴルフ会員権の譲渡損を使って給与所得などと損益通算ができましたが、10年前くらいに改正されて今はできません。

逆に生活に通常必要な資産というのもあります。家具や高額ではない貴金属や家財道具、通勤などに使う自家用車などです。これらは譲渡益が非課税となる一方で、譲渡損はなかったものとみなされますので、損益の認識すら行われません

個人に対する低額譲渡の損失は損益通算できない

個人に対する2分の1以下の譲渡、いわゆる低額譲渡ですが、もらった側では時価との差額が贈与税で課税されますが、譲渡した側はあくまでも実際の対価で譲渡所得計算しますので、譲渡損になることもあります。

そのときに仮に譲渡損がでたとしても、ほとんど贈与しているケースですから他の所得と相殺はできない、という取り扱いになります。

損益通算の相殺順序

相殺する順序についても、第1次通算から第3次通算で順序が決まっています。似たようなグループ内で相殺し、その次に別のグループでの相殺となります。

繰越控除のルール

続いて、繰り越し控除のルールです。

損失に関する申告が毎年必要

損失が生じた年から繰り越し控除する年まで連続して確定申告や損失申告をしないと損失の繰越控除ができません。税額がゼロでも、今年の申告でいくら部分を使って、残りは翌年にいくら繰り越します、という損失の繰越に関する記載も必要です。

控除順序の考え方

次に控除の順序が決まっています。一定のルールで控除していくことになります。また、2年分以上の損失を繰り越した場合、古い年に生じた損失から切り捨てになるため、古いものから順次控除するというルールになります。

相殺できる範囲の違い

繰越された損失の種類によって、相殺できる範囲が決まっています。土地建物の譲渡所得などからは控除できたり、できなかったり、ですね。

純損失はもともと総合課税の所得の繰越なので、土地建物等の譲渡所得からは控除できません。居住用の譲渡損の特例は、不動産の譲渡損ですが例外的に総合課税からも控除できます。雑損失の繰越控除は所得控除の繰越ですから所得の種類に影響なく控除できます。

合計所得金額への影響に注意!

あとは注意点ですが、所得要件などで使う合計所得金額は損益通算後、損失の繰越控除前、譲渡所得の特別控除の適用前の所得金額となります。

投資にはリスクがあります

投資には波がありますし、良い時もあれば悪いときもあります。

大きく利益がでることもあれば、その逆もあります。

損失がでたとしてもうまく節税に生かして、資産形成に役立てることが大事ですね。

 

 

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