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投資と資産形成の税金-上場株式の譲渡と配当の税金をわかりやすく解説

案内人のカエル税理士です。梅雨真っただ中ですが、いかがお過ごしでしょうか?

投資や資産形成で中心になるのは株式投資や投資信託です。基本的には上場株式も投資信託もほぼ同じ税金の取り扱いとなっています。

今回は上場株式の譲渡損益や配当金の税金について解説していきます。

上場株式の譲渡損益の税金

上場株式の所得には、大きくわけるとインカムゲインである「利子・配当」とキャピタルゲインである「譲渡損益」の2種類があります。

まずは、譲渡損益からです。

特定口座と一般口座とは

証券会社で口座を開設するときや取引をするときは、口座の種類は3種類から選択できます。

証券会社で譲渡損益を計算してくれるのが特定口座で、自分で購入時の取得価額と売却時の譲渡収入をもとに所得計算を行うというのが一般口座です。

特定口座にも2種類あります。

取引のつど源泉徴収がされたり、還付されたりする源泉徴収口座と、税金の源泉徴収や調整がない簡易申告口座です。

特定口座で源泉徴収あり口座であれば、源泉分離課税での申告不要制度も選択できます。譲渡損益について、総合課税はありません。

申告するか、しないか

源泉分離課税で申告不要とするか、申告分離課税の2択です。

この場合の申告不要というのは、上場株式の譲渡損益に関する部分については源泉分離課税で完結させるので、確定申告書に記載しない、という意味になります。

合計所得金額にも影響ない形の課税方式になりますので、特に理由がなければ申告不要とします。

逆に申告分離課税で確定申告をしたほうが有利になるケースとして次の3つがあります。

①複数の証券会社で譲渡益、譲渡損がわかれており、内部通算をしたい

複数の証券会社、例えば楽天証券で譲渡損、SBI証券で譲渡益のようなケースで、内部通算して相殺させるためには確定申告が必要となります。

②特定口座で譲渡損がでているが、配当金は特定口座で受け取っていない

譲渡損が生じた年の損益通算については、同じ証券会社で配当金も特定口座で受け取っていれば証券会社で相殺してもらえます。

配当金を特定口座で受け取っていない場合は、自動では相殺されませんので、損益通算により相殺させるためには配当金と譲渡損を源泉分離課税ではなく、申告分離課税で申告することが必要になります。

③ 損失の繰越控除をしたい

損益通算しても引ききれない部分は3年間の繰越控除もできます。

ただし繰り越しをする場合は、毎年連続して確定申告書に記載が必要となっています。

 

確定申告する場合は、合計所得金額には影響がでてしまいますので、要注意です。

極端な例ですが、10,000円の譲渡損と相殺させるために3,000万円の譲渡益を申告する場合、この3,000万円が合計所得金額に上乗せされますので、基礎控除の所得要件にひっかかります。基礎控除48万円がゼロになります。

上場株式の配当金の税金

今までは譲渡損益の話がメインでしたが、配当金については少し頭を切り替える必要があります。どちらかというと配当金のほうが、制度は複雑です。

譲渡損益との違いは、①配当金については「損失」がなく常にプラスであるいう点、②総合課税の選択が可能である点、③配当控除がある点の3つです。

配当金の受け取り方

まず、配当金は受け取り方が3種類あります。

特定口座で源泉徴収ありを選択していれば所得税や住民税が自動的に譲渡損と相殺されて調整がされます。株式数比例配分方式という方式です。

それ以外では銀行口座に入金してもらう、配当通知書をもらって金融機関で受け取る、という選択も可能です。

配当金の税金の取り扱い

フローチャート(出典:国税庁)をご覧ください。

配当所得は譲渡所得と違って特定口座でなくても源泉徴収の対象となるため、約2割の税金が源泉徴収はされますし、源泉分離課税で申告不要の選択もできます。

特定口座内であれば、譲渡損と自動的に相殺されて源泉分離課税で終了ということも選択できます。

確定申告をする場合は、申告分離課税のほかに総合課税の2種類が選択できます。

配当金は3択ですね。

総合課税と配当控除とは

総合合課税は給与所得などと合算されて超過累進税率となりますが、配当控除の適用も可能です。

配当控除とは何かというと、会社が配当を出す場合、配当金は法人税では経費にならずに、法人税を負担した後の税引後利益が財源となります。そのため所得税をそこにそのまま課税すると二重に税負担が生じることになります。配当控除はこの法人税と所得税の2重課税の防止のためのものです。そのためJ-REITや外国株式の配当金や分配金には配当控除の適用はありません。

課税総所得金額等が1,000万円以下の部分に対応する配当金なら配当所得の10%、1,000万円を超える部分は5%を税額控除できるという制度です。

投資信託は外貨建資産や株式以外の資産が含まれるので、その割合によりますが最大で5%の控除となります。住民税の配当控除は1,000万円を以下の部分は2.8%、1,000万円を超える部分は1.4%で、投資信託については最大で1.4%です。

申告分離課税を選択した場合は、同じく申告分離課税の譲渡損との損益通算が可能ですが、配当控除の適用はありません。

申告するかどうかと課税方式の選択について

また、申告するかどうかで、芋づる式のルールがあります。

【特定口座、株式数比例配分方式の場合】

特定口座内であれば申告するかどうかは特定口座ごと、証券会社ごとになります。特定口座内で譲渡損と相殺されている場合は譲渡損もあわせて申告するかどうかになります。

【特定口座以外の場合】

特定口座以外であれば、申告するか、申告不要をとるかは配当金の支払通知書により個別に選択が可能です。

確定決算の配当金は申告して、中間決算の配当金は申告しない、というのも可能です。

申告をするかしないかは特定口座ごとか、支払通知書ごとですが、いったん確定申告をすると決めた場合、申告する配当金のなかでは申告分離と総合課税を別々に選択することはできませんので、申告する配当金の全部をまとめて申告分離か総合課税かどちらかを選択する必要があります。

一方で配当金と譲渡損益の組み合わせですが、同じ証券会社の特定口座内でも譲渡損益は申告分離課税、配当金は総合課税という組み合わせも可能です。

 

こうやって考えると上場株式の税金は結構複雑ですよね。

さらに複雑になるのが住民税の取り扱いです。

 

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節税のコツは税金のリテラシーをあげることです。答えを丸暗記したり、誰かの話をうのみにするのではなく、仕組みを理解して節税を図りましょう!

 

 

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