高齢化社会の進展を受けて、高齢での相続が増えているようです。
亡くなった方(被相続人)が高齢であれば、当然相続人の方も高齢になります。
亡くなった方の奥様やご兄弟や、姉妹はいうまでもなく、お子様であったとしても100歳の方のお子様であれば70歳を過ぎていることもあります。
このような場合に問題になるのが遺産分割をすべき相続人の判断能力が十分であるかどうかということです。
認知症等で判断能力が不十分な方を含んだ遺産分割については法的なトラブルに発展することがあります。
今ほどコンプライアンスがうるさくなかった時代であればそれほど問題にはなりませんでした。
最近では、そういったご事情を知ったうえで預貯金の払い出しをした銀行や、名義変更を行った司法書士についても問題になるため、最近は名義変更等に応じてもらえないケースも増えているようです。
判断能力が不十分な方が法律行為を行う場合には、成年後見人の支援が必要となります。
被後見人が相続人となっている遺産分割協議にあたっては当然ながら後見人が被後見人を代理することとなります。
つまり成年後見人が本人の代わりに遺産分割協議に参加することとなるのです。
その協議をする場合には、原則として被後見人が法定相続分を取得するようにする必要があります。
したがって、勝手に放棄したり、不当に少ない取り分で協議に応じたりすることは基本的に許されません。
相続対策やご本人の意思等で生前にある程度家族で相続の方向性を決めてコンセンサスが取れているようなケースでも、成年後見人が必要となるとご家族の希望通りの分割にならない可能性もでてきます。
もちろん特別な事情がある場合には法定相続分を下回る分割が認められるケースもあるようです。
ただ、このようなご事情の場合にはなるべくなら遺留分を考えたうえで遺言を作成するほうが望ましいといえます。
また、後見人も相続人の一人であるようなケースでは被後見人と後見人との利害が相反してしまいます。
このような場合には後見人は被後見人を代理することができなくなりますので、別に特別代理人が必要となります。
特別代理人は家庭裁判所に選任の申し立てを行い、遺産分割協議における被後見人の代理人を決めることになります。
成年後見人や特別代理人の選任には時間がかかることも多いので、相続税の申告期限が近付いているようなケースではなるべく早めに専門家に相談して早急に段取りを整えていきましょう。