自分は医療系のお客様を担当することも多いですが、医療系は大小の規模があり、街の税理士事務所が顧問するのは基本的には個人クリニックが中心となります。
いわゆる病院という規模ではなく、○○医院とか○○クリニックという感じの規模感ですね。
個人経営が中心ですが、規模や家族構成によっては医療法人することが多くなります。
医療法人化する動機やタイミングは、節税であったり事業承継が目的だったりします。
税理士や会計事務所の立場からしても、医療法人化してくれたほうが実はうれしいことが多いです。
- 決算期を分散することができ、確定申告の繁忙期の業務が減る
- 個人開業医よりも若干の顧問料の値上げが期待できる
ということで、個人開業医が医療法人化することが多いのですが、担当者としての負担は少し増えます。
医療法人を担当するのが初めてという職員が知っておいたほうがいいことを少しだけ紹介します。
個人開業医と医療法人の税金の違いとは
まず、所得税ではなく法人税となりますから、各種別表の作成が必要で、会計事務所の担当者であれば通常の法人の決算とほぼ変わりはないと思います。
特に法人税についてはほとんど同じです。
違いがあるとすれば、出資持分のない医療法人では交際費の資本金の判定が特有であることくらいでしょうか
消費税は社会保険診療や自賠責や労災などが非課税となるのは個人開業医と同様ですね。
実務的には医療法人で一番特有な税金の扱いは事業税となります。
医療法人の事業税では2つの特徴的な処理があります。
- 事業税の税率が一般法人と異なる。
- 社会保険診療報酬については事業税が非課税となる。
このほかに、神奈川県などは委託事業のうち一定のものが非課税となる制度があったりします。
個人の事業税と似ていますが、微妙に計算方法が違うので注意が必要ですが、県税によって異なるので、医療法人が所在する都道府県の県税事務所の手引きなどを参照することになります。
神奈川県の県税事務所では、申告の時期になると手引きが同封されて郵送されてきます。
県や政令指定都市への届け出がある
医療法人を管轄するのは基本的には都道府県となり、政令指定都市などは市の単位になります。横浜市などは横浜市役所が管轄しています。
決算の後などにこれらの管轄する自治体に提出が必要な届出書などがいくつかあります。
- 決算届(事業報告書等届)
- 役員変更届
- 登記事項届
決算のつど提出するのは以上のものですが、定款を変更したい場合などには事前認可が必要だったりします。
これらは行政書士の業務ではありますが、税理士は行政書士を兼業することも多くて、書類の作成や提出は税理士事務所で行っていることも多いと思います。
また、毎期決算が終わると資産総額の変更登記が必要となります。司法書士と連携して登記申請をすることになり、登記完了後に登記事項届を都道府県に提出します。
税務会計よりも、法務関係の業務が多い傾向が医療法人にはあります。
医療法人に強い担当者になるためには?
そのため、医療法人に強い担当者になるためには、税務申告よりも医療法に基づいた法務関係の手続きを抑えることだと思います。
通常の会社は会社法という法律に基づいて運営がされますが、税理士法人であれば税理士法という法律に基づいて運営されることになります。
我々専門家の法人についてはこういった業法に基づいて運営があれ、医師であれば医療法が準拠法律となります。
その医療法のなかでも医療法人についての部分の理解が重要です。
例えば、医療法のうちの医療法人に関する部分について逐条で解説してくれている書籍があります。
税法も同様ですが、法律の理解については何となくわかった気になるよりも逐条解説で勉強すると理解が深まります。
そのほかに、医療法人の設立、運営、承継についてを勉強するための本も紹介します。
750頁くらいありますが、こちらも医療法にもとづいて一通りの重要項目を学習できる本です。こちらもおすすめで、経過措置型の医療法人と認定医療法人についてなどもわかりやすいと思います。