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金融庁の令和5年度税制改正要望、気になる資産所得倍増プラン関連はどうなる?

例年8月末で各省庁から翌年度の税制改正要望が公表されます。

今年は岸田内閣で打ち出している資産所得倍増プラン関連の税制改正要望が金融庁からでていますので、簡単に紹介してみます。

ただし注意が必要なのは、これらは税制改正項目ではなくて、あくまでも金融庁としての要望ですので、実際に税制改正が行われるかどうかは12月にだされる税制改正大綱で判明することになります。

www.fsa.go.jp

金融庁の税制改要望項目

  1. 資産所得倍増プラン関連
    (所得税)NISAの抜本的拡充
    (法人税)資産形成促進に関する費用に係る法人税の税額控除の導入
    (贈与税)教育資金一括贈与制度の拡充
    (所得税)金融所得課税の一体化
  2. クロスボーダー取引に係る税制上の環境整備
  3. 保険等
    ・生命保険料控除の拡充
    ・企業年金等の積立金い対する特別法人税の撤廃又は課税停止措置の延長
  4. 暗号資産
    ・暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し


これらのうち、個人投資家にとって興味があるのが資産所得倍増プラン関連の税制改正要望ですよね。

資産所得倍増プランの内容に限定して少し細かくみていきましょう。

NISAの抜本的拡充(簡素で分かりやすく使い勝手の良い制度に)

要望のポイントとしては次の6点です。

  • 制度の恒久化
  • 非課税保有期間の無期限化
  • 年間投資家枠を拡大し、弾力的な積み立てを可能に
  • 非課税限度額の拡充(簿価残高に限度額を設定)
  • 安定的な資産形成を促進する観点から、長期・積立・分散投資によるつみたてNISAを基本としつつ、一般NISAの機能を引き継ぐ「成長投資枠(仮称)」を導入
  • つみたてNISAの対象年齢を未成年者まで拡大

特に一般投資家がNISAに求めることというアンケート結果から、「投資可能期間の恒久化、非課税保有期間の延長、年間投資枠の拡大」のこの3つは6割超が回答していることを強調しています。

また、「成長投資枠」っていったいなんでしょうか?

改善要望の※で用語解説されています。

非課税限度枠の内枠として、①すでに積み上げた資産(預貯金)によるキャッチアップ投資や、②企業の成長を応援するため、上場株式や一定の商品性を持った株式投信等への投資を可能とする

この用語の説明でも、正確に推測するのは難しい感じがします。

①は、すぐに投資商品を購入しなくても資金を積み立てておけば後追いで枠を使えると意味でしょうか?

②は、つみたてNISAをベースにしながらも2階建て部分は残すという意味でしょうか?

推測の域をでませんが、簡素でわかりやすくと言いながらもあれこれ盛り込み過ぎて複雑になりそうな懸念が拭えません・・・

資産形成促進に関する費用に係る法人税の税額控除の導入

続いて、会社も従業員の資産形成の後押しができるという福利厚生型の制度として、要望事項としては次の2点がでました。

  • 資産形成に関する企業の取り組みを促す観点から、資産形成促進に関する費用(例えば企業が行う金融経済教育に関する費用)の一定割合について、法人税の税額控除を導入すること。
  • 職場つみたてNISA奨励金が「賃上げ促進税制」の対象となる旨を明確化すること。

なんとなくこういった福利厚生型の制度は大企業だけで行われていて、我々中小企業にとっては非常にうらやましいような気がします。

大企業であればこういった金融教育などを福利厚生の一環で取り組むことは可能でしょうが、中小企業では厳しいと思います。

大企業の従業員や公務員と中小企業の社員との格差や待遇面の違いが拡大するだけな気もします。

iDeCoも中小企業などではなかなか取り組みづらいですから、中小企業を含めて何かやるというのでれば、積立NISAと中退共などと組み合わせるということのほうが現実的で有意義な気もします。

中退共の積立金で運用とかできないのでしょうか???

教育資金一括贈与制度の拡充

これは以前ブームになって多くの祖父母から孫へ贈与された教育資金の一括贈与の仕組みと積立NISAの運用損失の穴埋めや教育関連団体等への寄付金などへ転用できるようにするというものようです。

確かに大学の入学時に寄付金を払うことになったりしたときに、教育資金として引き出しができるかどうかという問題がありますから、より使い勝手がよくなるかもしれませんね。

金融所得課税の一体化

これは前年(令和4年度)の税制改正要望でもあげられていたデリバティブ取引の金融商品一体課税への組み入れという論点と思います。

一つはFXなどの金融デリバティブ取引も株式などと同様に損益通算の対象とするという案だと思いますが、一方で令和4年の要望では一定の租税回避行為を防止することを目的にしていたと思います。

現状は雑所得で分離課税となっているFXなどのデリバティブ取引も、上場株式等の譲渡損益とすることは投資の利便性が高まる可能性はありそうです。

金融所得一体課税では、銀行預金利息、デリバティブ取引、暗号資産、、などどこまでが金融所得なのか、というのが課題ですね。

生命保険料控除制度の拡充

資産所得倍増プラン関連の税制改正要望ではないですが、個人の資産形成につながる改正要望としてあがっています。

これらも前年(令和4年度)の税制改正要望でもあげられていました。

生命保険料控除は、現行では一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つの区分でそれぞれ4万円ずつ、合計で最大12万円の所得控除が受けられる制度です。

2011年までは介護医療保険料控除がなく、一般の生命保険料控除と個人年金保険料控除でそれぞれ5万円、合計で最大10万円でしたから2012年以降はそれぞれの枠単位では1万円ずつ減額されてきています。

そこで、それぞれの枠を5万円に戻して最大で15万円控除が受けられるようにするという改正要望です。

人生100年時代という言葉を使って必要性をアピールしていますが、ただでさえ生命保険に入りすぎている日本人に生命保険料の枠はこれ以上に必要なのでしょうか?

「貯蓄から投資へ」というキャチコピーはよく使われますが、「保険から投資へ」というのもあるのではないか、と個人的には思います。

令和5年度税制改正がどう決まるのか、答え合わせは12月に!

下馬評のとおり、来年度の税制改正の目玉はNISAの拡充になりそうですが、どうでしょうか?

 

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12月中旬くらいに自民党・公明党から与党税制改正大綱が発表されます。この税制改正大綱が概ね翌年度の税制改正案となり、3月くらいに国会を通って法律として運用されることになります。

とりあえず12月、どんな形で改正要望が盛り込まれるのか、今年はちょっと楽しみにしたいと思います。

 

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