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東京高裁 弁護士業の必要経費について

先月、東京高裁で弁護士業の必要経費についての判決がでました。


結果は原判決変更、一部取り消しということで、国側が敗訴という形になったようです。


さて、この裁判については弁護士会の役員が弁護士会等の公式の行事後に行われる懇親会などで支払った懇親会費等の費用、そして弁護士会の役員立候補のための費用が経費で落ちるかどうかというものでした。


東京地裁では平成23年8月9日判決で納税者の主張が棄却されていました。


このことから士業の必要経費の考え方を巡って大きな物議をかもしだしていました。


東京地裁の判決では、『事業所得の金額の計算上必要経費が総収入金額から控除されることの趣旨や所得税法等の文言に照らすと、ある支出が事業所得の金額の計算上必要経費として控除されるためには、当該支出が所得を生ずべき事業と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要であることを要すると解するのが相当である。そしてその判断は、単に事業主の主観的判断によるものではなく、当該事業の業務内容等個別具体的な諸事情に即して社会通念に従って客観的に行われるべきである。』とされていました。


つまり、「所得を生ずべき事業と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要であること」が要件とされていました。


今回はこの「直接」という文言と、専ら業務の遂行上必要というところまで求められるのかどうかで逆転の判決になったようです。


当社でも弁護士の先生の税務顧問もさせていただいていますが、弁護士さんの仕事は税理士と違って一度顧問になれば半永久的につながりをもてるというものではなく、特に民事の仕事でいうとスポットの仕事が多いようです。


そして個人で行っている弁護士さんでいうと得意分野が分かれていますから、弁護士さん同士のネットワークで仕事を受けたり、共同受任するというケースも多いようです。


弁護士さんをはじめ士業の仕事では交際費が直接的に仕事に結びつくという客観的な指針は当たらないように思います。


そもそも交際費が直接結びつくとしたらそれこそ談合や贈賄くらいしか当たらないのではないでしょうか?


各士業の事務局や役員の方たちはボランティアに近い形で参加されていると思いますが、その意味合いを全く斟酌されていなかったという感じです。


また、所得税の条文では必要経費は、所得税法37条で次のように規定されています。


『これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用』


条文解釈の面からいうとこの条文中の、及びの前後の取り扱いを巡っての解釈に相違があったともいわれています。


直接に要した…というのがその後ろの費用の額にだけかかっていると解釈するのが通説であるのに対して、東京地裁の判決ではそれを拡大して及び以降の販売費、一般管理費~まで直接性を論じた点について非難が集まったのです。


あくまで直接対応ではなく、一般対応でもいいというのが今回の東京高裁の判決では明らかにされました。


今回の判決で、この必要経費の範囲が逆に大きく解釈され、売上と直接関係がなくとも業務の遂行上必要な支出であればいいという形になっています。


社会通念上とか、社会一般の常識に照らして考えてくれればいいということですが、この判決をもって家事関連費全体について同様に判断していいかどうかはもう少し検討が必要かもしれません。

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