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-令和2年度税制改正-新NISAとロールオーバーの関係

FPのSGで勉強会の講師ををやるので今週もレジュメの準備を行っていました。

令和2年度税制改正がテーマですが、FPとして関心が高いのはやはりNISAの改正ではないかと思っています。

そのためNISA関係を少し厚めに解説していこうと思って準備をしています。NISAの制度もちょっとわかりづらい部分もありますが、自分がやっているのは積立NISAなので実際のところ一般NISAはきちんと理解はできていないところでした。

とはいえ食わず嫌いにならないように今回しっかりと勉強して臨みたいと思っております。

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 令和2年度税制改正でNISAは変わります

NISA制度には3つの制度があります。

積立NISA、一般NISA、ジュニアNISAですよね。

今回は3つの制度がそれぞれ変わることになっています。

積立NISAの改正

まず、影響が少ないのがつみたてNISAで、5年延長となります。

最大積立期間が20年というのは変わらないのですが、現行はお尻がきまっていたので開始時期によっては20年丸々使えなかったようです。それがお尻の時期が延びて2023年まで開始なら2042年まで積立ができて、最大20年間満額で使えることになります。

ジュニアNISAの改正

 ジュニアNISAについてはあまり使われていないから延長せずに2023年末で新規スタートは終了ということになりました。新規スタートは終了ですが現在持っている部分は期限まで続きます。贈与と組み合わせたよくわからない制度なので、ちょっと制度設計として難しかったかなと思います。とにかく期限までで廃止。

一般NISAの改正

今回の改正で複雑なのが一般NISAで、2階建ての制度になります。

1階で積立投資を行っている場合には2階で別枠の非課税投資を可能とする2階建ての制度に見直しして5年延長されます。

まとめると・・

積立NISAは5年延長、ジュニアNISAは延長せずにフェードアウト、一般NISAは改組される形です。

新しい一般NISAは2階建てになりますが、現行NISAから継続の人は1階の積み立てなしで2階部分のみでも可となります。1階部分の枠は20万円で積立NISANの40万の半分の枠ですが、投資対象も積み立てNISAと同様なのでそのまま積み立てNISAに移行が可能となります。

結局、最終的には積立NISAに統合させていきたいのかな?という感じなのでしょうか。ハイブリット方式というべきなのか、移行過渡期の形態というべきなのか

新NISAは2階部分では102万円まで投資信託や上場株式等でも運用する形になりますが、高レバレッジなものということでリスクの高いものは除外されることになります。

NISA制度移行の選択肢

次に移行の選択肢についてみていきたいと思います。

現状は積立NISAを利用している人

最終的には積立NISAへと移行していく形になりますが、現状で既に積立NISAのケースは年ごとに一般NISAとの選択が可能となっていると思います。つまり2023年までは年替わりで選ぶこともできるかと思います。

現状は一般NISAを利用している人

次に現状は一般NISAのケースですが、2パターンあります。

新NISAを経由するかどうかです。そのまま積立NISAにいくこともできるし、5年間新NISAを経由して積立NISAへ移行も可能となります。

移行する場合はロールオーバーをするかどうかも選択肢としてでてきます。

2014年から5年間一般NISAで運用していたものが2019年でロールオーバーになっています。

これが次は2024年ですがこの場合には新NISAへ移行する形になります。さらに5年後2029年には新NISAが終了していますので、積立NISAに移行するという流れになるかと思います。

ロールオーバーって何?

このロールオーバーもなかなかわかりにくい制度だと思います。実際にはここが一番の難関論点ではないでしょうか?

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※出典:金融庁

一般NISAの非課税口座は5年間なのですが、5年ごとにそのまま非課税口座で継続するか、課税口座へ移管するかの選択ができる立て付けになっています。

何もしないと課税口座である特定口座に移管されることになりますが、そのままロールオーバーすることも、非課税口座のまま売却することも可能です。

NISA口座では売却した場合には譲渡益がでていても非課税ですし、損の場合でも切り捨てになります。つまり、この段階ではいくらで買ったとか譲渡損益の計算も無意味ということになります。

ロールオーバーについては非課税期間が終了する年の翌年分の枠を使って再投資をする形になり、使う枠の計算はその時点での時価ということになります。

枠が余っていれば追加の投資も可能になりますが、枠をオーバーしていたとしても追加投資ができないだけで売却などが強制されるわけではなく非課税で再投資ができます。

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※出典:金融庁

ロールオーバーしない場合の留意点

逆に気をつけないといけないのがロールオーバーせずに特定口座に移管した場合です。

非課税期間終了時の時価で特定口座へ移管されることになります。

つまり、実際の取得価額とは関係なく、非課税口座終了時の時価で買ったのと同じ取得価額で、売却時の譲渡所得計算がされることになります。

値上りしているケースと値下がりしているケースがでています。

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※出典:金融庁

ケース1の値上りしているケースでは例えば実際の購入価格が120万円で非課税期間終了時の時価が150万円のケースでは150万円で購入したこととして売却時の譲渡所得計算がされますから、売却価格が170万円であれば課税される譲渡所得は20万円になりますし、そこから値下がりして110万円で売却した場合には譲渡損の40万円が他の株の譲渡益と相殺できたり、繰り越しができます。

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※出典:金融庁

逆にケース2のように時価が100万円で特定口座に移管された場合には売却価格が130万円のときは30万円の譲渡益に課税されることになります。

それではどんな時にロールオーバーして、どんな時に一般口座に移管するのがいいのか?ということになりますが、非課税期間終了時の時価よりもさらに上昇する場合には非課税口座のままロールオーバーするがいいですし、下落か横ばい予想であれば売却か一般口座への移管がいいと思います。

いずれにしても購入価格の120万円については意思決定には何の意味もないということになります。

新NISAとロールオーバーについて

続いて改正後の新NISAとロールオーバーについては、基本的には今までと同じ考えのようです。先ほどのように一般NISAから新NISAを経由して積立NISAへロールオーバーするパターンです。

まず一般NISAから新NISAについては基本線は今みたロールオーバーと同じですが、枠として全体では122万円で枠が余る場合には先に2階部分を埋めていってから1階を使う形になるようです。

つまり非課税期間終了時の時価が130万円の場合には122万円を超えていますから追加で投資する枠はありません。110万円の場合は2階は全部埋まって1階部分が8万円残りますので、1階部分の8万円を使って追加投資が可能です。

100万円の場合にはどうなるかというと2階の枠も2万円残りますから1階の枠の20万円と2階の2万円の合計22万円が追加投資ができるというわけですね。

新NISAから積立NISAへの移行時のロールオーバーについて

さらに5年後に新NISAから積立NISAへ移行するケースでは1階部分のみロールオーバーが可能となります。

この場合の枠の計算は今までとは異なることになる見込みのようです。つまり時価ではなく簿価である購入価格で枠の計算を行うわけです。

今まで実際に取得したときの購入価格は意味がないと言ってきましたが、ここでは意味があるものになります。

20万円の枠について購入時20万円だったものが5年後に50万円になっていたとしても、追加投資枠の計算では50万円ではなく20万円で計算して、40万円の積立NISAの残りの枠20万円は追加投資が可能となる、、といわれていますが、まだまだ先の話なので実際はどうなるのでしょうか。

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